背骨のカーブはなぜ必要なのか?~ストレートネックと円背~
名古屋市栄タイコ接骨院の岩田祐典です。
猫背などの不良姿勢のパターンを今回は首と背中に注目して解説していきます。
不良姿勢でよくみられるものにストレートネックや円背と言われるものがあります。
これらは背骨が正常な状態から逸脱しています。
まずは背骨の正常な状態から理解しましょう。
背骨の構造
背骨は頚椎、胸椎、腰椎、仙骨、尾骨と呼ばれる骨で構成されています。
仙骨の上に全部で24個の脊椎(頚椎7個、胸椎12個、腰椎5個)が積み木のように積み重なっています。
背骨は真っすぐ積み重なっているのではなく横から見ると緩やかにS字状カーブ(弯曲)しています。
頚椎では”前弯”、胸椎では”後弯”、腰椎では”前弯”と決まっていてこれを生理的弯曲と言います。
この弯曲の役割は身体を”支持”することです。地球上ではヒトの身体には重力がかかっていて、重力がかかってもバランスを取ることができるようにS字状の構造をして支持します。
ヒトは生まれたときには背骨のこの生理的弯曲はありません。背骨全体がC字状に丸まっています(後弯)。
生後3~4ヶ月ぐらいで頚椎の前弯ができていきます。重力に逆らって頭を安定させるようになり、いわゆる「首が据わる」状態が完成します。
頭を支えるのに頚椎の前弯が大事だという事がわかりますね。
次に生後8か月~1歳ぐらいで腰椎の前弯ができていきます。身体を起こして安定できるようになるためです。立ったり、歩き始めたりできるようになるのはこの時期です。
腰椎の前弯が上半身を支えるのに大事だという事がわかりますね。
簡単に言うと、筋肉が弱い赤ちゃんは頚椎の前弯がなければ頭が安定させれないし、腰椎の前弯がなければ立って歩くことができないのです。
背骨の生理的弯曲がないとバランスが取りにくいという事が理解していただけたでしょうか。
これを踏まえた上でストレートネックや円背について説明します。
ストレートネックとは
頭部が前方に突出し、頚椎の前弯がなくなり真っすぐになった状態を言います。
診断としてはレントゲンを撮って診ることになりますが、頭が常に身体よりも前に出ている人はストレートネックの可能性が高いです。
先ほど説明したように頚椎の前弯がない状態という事は頭のバランスを取りにくくなっています。
本来、頭は背骨(頚椎)と首の筋肉で主に支えられています。
頭の重さは6㎏前後と言われていて、結構重いです。ストレートネックになるとこの頭の重さを頚椎で支えるのが難しくなります。
頚椎での支持ができなくなると、首の筋肉が頚椎の分も頑張って頭を支えなくてはいけません。
その結果、首の筋肉が疲れ果ててしまい、首や肩のこり、痛みなどが出てきます。
酷いと頭痛やめまい、手の痺れなどの症状も出てしまう人もいます。
また顎が前に出るため咀嚼筋(顎を動かす筋肉)にも負担がかかりやすくなるため顎関節症にもなりやすいです。
円背とは
胸椎の生理的後弯より、後弯が強くなった状態、つまり背中の丸まり増加した状態を言います。
加齢とともに筋肉が低下し背骨が変形、背中が丸まってくる方は多いです。しかし。近年は若い人でも背中が丸まってしまっている人をよく見かけます。
これはスマートフォンなどの普及に伴い増えてきていると考えられます。
高齢者の円背は歩行などにも影響が出てきます。バランスを取るために膝が曲がり足が前に出にくくなり、膝や腰への負担も増加します。
膝の変形(変形性膝関節症)や腰の痛み(高齢者の多くは脊柱管狭窄症)に進行していきます。
そして円背は年齢に関係なく、呼吸や内臓の位置にも影響を及ぼします。
背中が丸くなることで胸椎の動きが制限され呼吸がしにくくなり、内臓は圧迫され下垂し血流が悪くなり腸の機能が低下、便秘などの原因にもなります。
ストレートネック・円背になりやすい人の特徴
・デスクワークが多い
・長時間車の運転をする
・スマートフォンをよく使う
・ゲームをよくやる
・読書が好き
・高い枕で寝る
これらに当てはまる人は注意してください。共通して言えるのは頭が身体よりも前に出やすい状態にあるという事です。
下を向いて何かしたり、長時間悪い座り方(姿勢)でいることでストレートネックや円背になってしまいます。
チンイン+胸反らし・エクササイズ
チンイン・エクササイズは頭を正しい位置に安定させるため、ストレートネックを予防・改善するための運動です。
「チン=顎」、「イン=引く」名前の通り顎を引き頚椎を正しいアライメントに戻す動きになります。
これに胸反らしエクササイズを同時に行うことで胸筋群のストレッチング、肩甲骨間の筋肉の強化、胸椎の後弯の減少により円背の改善にも効果的です。
<方法>
①立位・座位でできるだけ真っすぐ背筋を伸ばした姿勢になる
②顎をゆっくり引いていく(チンイン)
※二重顎を作るイメージでやるとやりやすい。下を向いてしまうのはNG。目線はできるだけ変えずに頭が水平に動くように意識。
③同時に胸を前に張り、両肩甲骨を寄せる(胸反らし)
※腰が反らないように腹筋にも力を入れる(お腹をへこませるように)
④顎を引いた状態・胸を張った状態で5秒キープ(下の写真の右)
⑤顎・胸をゆっくり元に戻し、リラックス
これを繰り返していきます。
目安として一日10回を3setおこないましょう。
地味な運動ですが頭を正しい位置に安定させるのに必要な筋肉を鍛えることができます。
写真左は頭が前に出て顎が上がった姿勢で悪い姿勢です。このエクササイズをして姿勢を改善しましょう。
参考文献
竹井仁(2015-2018)『正しく理想的な姿勢を取り戻す 姿勢の教科書』 株式会社ナツメ社.
竹井仁(2018)『不良姿勢を正しくする 姿勢の教科書 上肢・下肢編』 株式会社ナツメ社.
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