お尻の筋肉が正しく使えると身体の動きが変わる!?
名古屋市栄タイコ接骨院の岩田祐典です。
今回はお尻の筋肉について書いていこうと思います。
お尻の筋肉は理解して正しく使うとダイエットやヒップアップを目指している人では効率よくトレーニングができるようになります。
また腰痛や股関節痛の予防・改善、スポーツなどのパフォーマンス向上させるためにも大事な筋肉です。
お尻の筋肉を知ろう
<お尻の筋肉の種類>
・大殿筋
・中殿筋
・小殿筋
・深層外旋六筋(梨状筋など)
大殿筋
お尻の筋肉の中で最も表層にある筋肉です。一般に”お尻”と言われるときにはこの大殿筋を指します。
腸骨や仙骨から大腿骨の殿筋粗面に付着する筋肉で、主に股関節の伸展(太ももを後ろに動かす)、外旋(太ももを外に捻じる)をする役割があります。
走る、スキップ、ジャンプ、座った状態から立ち上がったり、階段を昇るときによく使われます。
大殿筋は人体の中で単一筋としては最も大きい筋肉と言われており、大きい筋肉を鍛えることはエネルギーの消費を増やし、代謝を上げるのでダイエットの際は大殿筋を鍛えるのが成功の秘訣とも言えるでしょう。
※参考までに…複合筋も含めると1位大腿四頭筋(大腿直筋、内側広筋、外側広筋、中間広筋の複合筋)が最も大きい筋肉。
またお尻が垂れている人はこの大殿筋が弱っている証拠。ヒップアップしたいなら大殿筋をしっかり鍛えましょう。
大殿筋のトレーニングをするとき股関節を外旋位(つま先を外側)に向けることで力が入りやすくなるので意識してみてください。
中殿筋
大殿筋の1層奥にあるのが中殿筋。
腸骨から大腿骨の大転子に付着する筋肉で、主に股関節を外転(太ももを外側に開く)、前部線維は内旋(太ももを内に捻じる)、後部線維は外旋をする役割があります。
片足立ちをした時地面に着いている側の中殿筋が働き、骨盤が反対側に倒れないように支えます。これは歩く時に重要で中殿筋が弱っていると片足立ちになったとき骨盤が反対側に傾く現象が起こります。これをトレンデレンブルグ徴候と言います。この現象が起こると正しく歩けません。
中殿筋が機能していないと歩くと疲れやすかったり、転倒のリスクも増えます。
中殿筋をかばうように他の筋肉を使うので腰や膝などを痛める原因にも。
小殿筋
中殿筋の奥にあるのが小殿筋。
腸骨から大腿骨の大転子に付着する筋肉です。中殿筋より少し小さい筋肉ですが、役割は中殿筋とほぼ同じです。
小殿筋は中殿筋をサポートするように働き、中殿筋とともに股関節を安定させるための「お尻のインナーマッスル」と言えます。
この2つの筋肉は股関節を外側から安定させる役割があります。前面からは腸腰筋、後面からは深層外旋六筋が股関節の安定に関わります。
股関節を安定させる筋肉に不具合があると上手く股関節を動かせなくなり股関節のつまりや痛みを感じるようになります。
深層外旋六筋
深層外旋六筋は股関節の後面に存在する6つの筋肉を総称して呼ばれています。
・梨状筋
・上双子筋
・下双子筋
・大腿方形筋
・内閉鎖筋
・外閉鎖筋
これら6つの筋肉によって股関節を後方から安定させて、股関節の外旋に関与しています。
股関節の外旋は大殿筋がメインで、深層外旋六筋はサブ。大殿筋が大きく動きを出し、深層外旋六筋は股関節を安定させながら外旋方向に導く。
要するに、大殿筋だけでは股関節をスムーズに外旋できないし、深層外旋六筋だけでも外旋はできません。
この中でも梨状筋の柔軟性の低下は様々な障害を及ぼします。
梨状筋は仙骨から大腿骨の大転子に付着する筋肉です。股関節を外旋、わずかに外転する役割があります。
梨状筋は柔軟性が低下する股関節の運動が制限されます。股関節を正しい位置に安定させれなくなり、動かすと股関節の前面にストレスがかかり鼠径部痛が出現。
また硬くなることで坐骨神経を絞扼し、お尻の痛みや太ももの裏の痺れなど神経症状が出てきます。
これは梨状筋症候群と言われる疾患で、腰椎椎間板ヘルニアにも似た症状なので鑑別が必要です。
股関節の柔軟性はなぜ大事か
よくスポーツの場面で「股関節を柔らかくしなさい」と指導されています。これは大事な指導だと思います。
「なぜ股関節を柔らかくするといいか?」これを理解する事でさらにパフォーマンスを向上したり、ケガのリスクを減らすことができると思います。
これはスポーツをやっている人だけに限らず言える事です。腰痛や股関節痛などで悩んでいる人は特にです。またダイエットをしたい人も股関節を柔らかくすると筋肉の活動量が増え代謝が良くなります。
キーワードは”動き”と”安定”です。
股関節は骨盤と大腿骨(太ももの骨)でできており、骨盤に大腿骨がはまり込む構造になっています。人間の身体の中でも大きな可動域を有する関節で、スムーズに動かすには正しい位置で”安定”していることが大事です。
外側からは中殿筋・小殿筋、前面からは腸腰筋、後面からは深層外旋六筋、筋肉以外に靭帯が股関節の”安定”を担っています。
安定が取れた状態で大殿筋などが股関節を動かすことで、初めてスムーズに”動く”ことができます。
例えば中殿筋・小殿筋の柔軟性が低下していたとします。すると股関節の”安定”のバランスが崩れ正しい位置でキープできません。股関節が「少しズレている」、「はまり込みが悪い」こんなイメージをもった方がわかりやすいと思います。
この状態で股関節を使おうとするとスムーズに動かせなくなります。これが”股関節のつまり”の原因。さらに使い続けると股関節自体の痛み、代償するように身体を使うようになり腰痛、膝関節痛などのケガが起こります。
股関節が柔らかいと筋肉のバランスがとれ、大腿骨を正しい位置にキープでき”安定”します。すると”動き”がスムーズになり使いたい筋肉が使いやすくなるためパフォーマンス向上、筋肉の活動量も増えるので代謝が良くなります(ダイエットに効果的)。
各筋肉のトレーニング
フロントランジ(大殿筋)
下半身、特に大殿筋やハムストリングスに効くトレーニングです。
<方法>
1.足を肩幅に開き、両手は腰において立つ。
2.片足を1歩踏み出し、踏み出した方の膝が90°になるように曲げる。後ろの膝が床に着かないように腰を落とす。
※膝がつま先より前に出ないように注意!膝を痛める原因に!
※つま先と膝が同じ向きを向くように!膝が内に入らないように注意!(ニーインNG)
※後ろのかかとは自然に浮くように
3.踏み出した足を元の位置に戻す。
※この時踏み出した側のお尻、ももの裏の筋肉を使うのを意識
これを左右交互に繰り返します。
目安は左右交互に20回を2~3set(カウントは片足で1)
ライイング・ヒップアブダクション(中殿筋・小殿筋)
股関節を外転させる筋肉のトレーニングです。主に中殿筋・小殿筋・大腿筋膜張筋を鍛えることができます。
<方法>
1.横向きで寝転がり、下側の手で頭を支え、下側の脚は軽く曲げ体を安定させる。
2.上側の脚を身体の真横にゆっくり上げていく。つま先は下を向け、かかとから上げる。
※脚が前後にブレないように注意!前後にブレると他の筋肉が活動してしまう
※つま先を下側に向けることで股関節内旋位となり中殿筋・小殿筋が活動しやすくなる
3.上げた脚をゆっくり下ろしていき、つま先が床に触れるところまで下ろしたらもう一度上げる。
※下ろす時もトレーニング!完全に脚を床についてしまうと筋肉が緩んでしまうのでお尻の横に力を入れながらゆっくり下ろしましょう
目安は15回を2~3set(1setおきに左右交代)
クラムシェル(深層外旋六筋)
股関節を外旋させるトレーニングです。主に深層外旋六筋・中殿筋後部線維を鍛えることができます。
<方法>
1.横向き寝転がり股関節45~60°、膝関節90°曲げ両足をそろえる
※肩・腰・足首が一直線上にくるように
2.上側の膝をゆっくり開いていく
※股関節・踵(かかと)を支点につま先も広げ、お尻に力が入るのを感じましょう
※膝を開く時、身体が開かないように注意!お尻に刺激が入りにくくなってしまいます
③ゆっくり閉じていく
※開いていく時はもちろん、ゆっくり閉じることで筋肉への刺激の入り方が変わり効果的
※膝同士がつくとお尻の力が抜けてしまうので完全に膝を閉じ切らないのがポイント
目安は10~15回を左右2~3set
参考文献
原島広至(2004) 『肉単(ニクタン)ー語源から覚える解剖学英単語集』 河合良訓監修,株式会社エヌ・ティー・エス.
「大殿筋(だいでんきん)」,<https://muscle-guide.info/gluteusmaximus.html>
「梨状筋症候群 Piriformis syndrome」,<https://www.zamst.jp/tetsujin/hipjoint/piriformis-syndrome/>
Kirsten Goez-Neumann(2005) 『観察による歩行分析』(月城慶一・山本澄子・江原義弘・盆子原秀三) 株式会社医学書院.
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