産後の骨盤ケアとインナーユニット
今回は産後の骨盤ケアをするべき理由と産後ケアで大事な「インナーユニット」4つの筋肉『横隔膜』『腹横筋』『骨盤底筋群』『多裂筋』について解説します。
産後の骨盤ケア(産後骨盤矯正)は必要?
結論から言うと、「産後の骨盤ケア(産後骨盤矯正)はするべき」です。
産後は1〜2ヶ月は特に骨盤が緩んでいる時期なのでとても歪みが生じやすい時期です。
考え方を変えると、緩んだ骨盤は正しくケアすることで良い状態に戻すのに最適な時期とも言えます。
元々身体が歪んでいた人は産後に歪んだ身体を改善するチャンス。
なぜ骨盤が緩むのか?
骨盤が歪んでしまうのはホルモンが関係します。
妊娠中から出産に向けて赤ちゃんがお腹の中から出てきやすいようにお母さんの骨盤は特にゆるゆるになります。
この骨盤をゆるゆるにするホルモンが『リラキシン』
リラキシンは妊娠中から出産後数日〜数ヶ月に渡って分泌されるため、出産後数ヶ月は骨盤が緩んだ状態が続きます。
緩んだ骨盤はリラキシンの分泌量が減るに連れて徐々に元に戻ろうとします。
しかし、骨盤が元に戻ろうとするこの時期に子育てが始まり日常生活で身体に負担がかかりやすく日常生活での左右差も生じやすい
ケアをせずそのまま生活をしていると骨盤は歪み、腰痛や肩凝りなど様々な症状の原因になります。
産後の骨盤ケアはいつからするべき?
産後の骨盤ケア始める最適時期は『産後2〜6ヶ月』
産後すぐは出産によって身体はかなりダメージを受けているのでゆっくり家で休みながら子育てをしましょう。
緩んでいる骨盤が元に戻ろうとする産後半年〜1年以内の時期は骨盤を整えるケアをきちんとすることで歪みのない骨盤を獲得できるチャンス。
産後骨盤ケアの最適な開始時期は体調が落ち着いた「産後2〜3ヶ月頃」から始められるのがオススメです。
産後特に大事なインナーユニット
産後は肩こりや腰痛、ぽっこりお腹、骨盤や腰回りが広がり妊娠前に履いていたズボンが履けない、尿もれするなど悩みを抱えている方が多いです。
産後の身体は、体幹にあるインナーユニットとの
関係が深いので一緒に学んでいただけたらと思います。
体幹のインナーユニット4つの筋肉とは?
体幹部(お腹から骨盤)の奥深くにある4つのインナーマッスルこれを合わせて“インナーユニット”と呼ぶ。
[体幹のインナーユニット]
①横隔膜
②腹横筋
③骨盤底筋群
④多裂筋
この4つの筋肉が連動して働くことで
「身体を安定させて姿勢を保持」
「内臓を正しい位置に保持」
[インナーユニットが機能していないと]
「姿勢の悪化」「腰痛」「肩凝り」
→身体が不安定
「冷え性」「むくみ」「便秘・下痢」「生理痛」「尿漏れ」
→内臓の位置が下がり、血管や臓器を圧迫し血流が悪くなり内臓の機能が低下
『インナーユニット』の4つの筋肉がコントロールでき、かつ連動して動かせることが大事。
産後はインナーユニットの筋肉が筋力低下を起こしやすいので特に鍛える必要があります。
横隔膜
横隔膜はインナーユニットとして円柱の「上面(蓋)」を構成
[横隔膜の役割]
①最も重要な吸気筋(息を吸うための筋肉)
②インナーユニットを形成し「腹圧の維持」
③副交感神経を刺激し身体をリラックス
④横隔膜の動きにより血液の循環を促進
①横隔膜が収縮するとドームが下がるように動く。
この時“肺”が膨らみ空気を取り込むことができる。
横隔膜が硬く、上手く使えていないと『呼吸が浅くなる』
②「腹横筋」「骨盤底筋群」「多裂筋」と協調し腹腔の内圧を維持することで体幹を安定させる。
また排便や分娩時に役立つ便秘の改善や出産に向けて妊娠中から意識することが大事。
③横隔膜が動くことによって迷走神経を刺激することができる。
迷走神経は身体をリラックスさせる『副交感神経』の1種。
④横隔膜と下大静脈は筋膜(ファシャ)で連結しており横隔膜の収縮で下大静脈にポンプ作用を促し血液の循環を促進する。
正しい「腹式呼吸」で横隔膜を“柔らかく”“大きく動く”状態にしよう。
次の動画では正しい「腹式呼吸」の方法を解説。
横隔膜を使った「腹式呼吸」
腹式呼吸とは主に『横隔膜』を使った呼吸の方法
[方法]
・息を吸う時“お腹を膨らませる”
・息を吐く時“お腹を凹ませる”
・呼吸はゆっくり、5秒で吸って5秒で吐く
お腹を膨らませる時に「横隔膜」が働く
お腹を凹ませる時に「腹横筋」が働く
これらの筋肉が上手く機能していないと呼吸が浅くなったり、体幹の安定性がなくなってしまう。
肩凝りで悩んでいる方身体に力が入ってしまいリラックスできない方にオススメです。
寝る前に行うことで睡眠の質も向上。
呼吸は誰かに教えてもらったことがなく産まれてすぐに自然にできるようになるものです。
ヒトにとって酸素を身体に取り込むことは命を左右するとても大事なことですが正しい呼吸を心がけてしている方は少なく悪い呼吸の仕方になっている方が多いように感じます。
健康を考えるとき食事は意識するけど呼吸も同じぐらい意識していますか?
どちらも同じぐらい健康面で大事なことです。
ぜひ腹式呼吸を日常に取り入れてみましょう。
腹横筋
腹横筋は腹筋群の“1番深層”の筋肉
インナーユニットではお腹の周りを1周ぐるっと囲む筋肉
[腹横筋の役割]
①最も重要な呼気筋(息を吐くための筋肉)
②インナーユニットを形成し「腹圧を維持」
③体幹を安定させるための筋肉「天然のコルセット」
④姿勢を維持するための「抗重力筋」
①腹横筋が収縮しお腹が凹むとしっかり息を吐くことができる。
ジャンプと同じで「深くしゃがみ込めば高く飛ぶことができる」
「息をしっかり吐くことでたくさん息を吸うことができる」
②「横隔膜」「骨盤底筋群」「多裂筋」と 協調し腹腔の内圧を維持することで体幹を安定させる。
また排便や分娩時に役立つため、便秘の改善や出産に向けて妊娠中から意識することが大事。
③腹横筋が働くことで腹腔の内圧が高まり腰椎を安定させることができる。
別名「コルセット筋」とも呼ばれる。
腰椎の椎間板にかかる力や背中の筋肉への負荷を軽減させるため、腰椎のヘルニアや慢性的な腰痛の予防・改善に重要。
④姿勢を保持する「抗重力筋」の1つ
“反り腰”や“猫背”の方は上手く機能していない可能性もあるため、腹横筋の機能を高めるためには「ドローイン」をしよう!
ドローインは腹式呼吸をしながら「お腹を凹ませること」を特に意識した呼吸のトレーニング。
お腹の周り360°使うことがポイント!
次の動画で腹横筋を意識した「ドローイン」の方法を解説。
ドローインで腹横筋を鍛えよう
〈方法〉
・息を吸う時“お腹を膨らませる”
・息を吐く時“お腹を凹ませる”
・呼吸はゆっくり、5秒で吸って5秒で吐く
・腹式呼吸を行い、息を吐き切ったところでお腹を最大限凹ませて5秒間キープ
ポイントは「お腹周り360°全体が凹むことを意識」
恥骨を持ち上げ腰を少し丸めるとより腹横筋に効き、効果UP!
骨盤底筋群
骨盤底筋群は名前の通り骨盤の底面にある筋肉の総称
“ハンモック”のように臓器を支えている
[骨盤底筋群の役割]
①骨盤内の臓器を支える
②インナーユニットを形成し「腹圧の維持」
③妊娠中赤ちゃんを支える
④排尿・排便のコントロール
①骨盤の底でハンモックのように「膀胱・子宮・直腸」を支える。
骨盤底筋群が弱っていると“骨盤臓器脱”と言って内臓が膣から外に出てきてしまうことがある。
②「横隔膜」「腹横筋」「多裂筋」と協調し腹腔の内圧を維持することで体幹の安定、姿勢の保持。
特に「腹横筋」との連動性が高く腹横筋と一緒に鍛えることがポイント。
③妊娠中、赤ちゃんを骨盤内で支えるためにとても重要な筋肉。
また出産時に1番負担がかかる筋肉のためコントロールできるようになっているとお産がスムーズに!
④骨盤底筋群が弱っているとくしゃみなどでの“尿漏れ”や排便がうまくできず“便秘”の原因に。
特に産後は骨盤底筋群の緩みから尿漏れが起きやすいので妊娠前、妊娠中から鍛えよう!
骨盤底筋群を鍛えるには腹横筋と連動して使うことが大事になります。
[骨盤底筋群を収縮させる際のイメージ]
・おしっこを我慢するように
・お尻の穴を締めるように
・(女性は)膣を締めるように
呼吸を意識してトレーニングをしましょう。
次の動画では呼吸を意識して腹横筋と連動させた骨盤底筋群のトレーニングを紹介
骨盤底筋群を鍛える呼吸と連動したヒップリフト
ヒップアップでよく行われるトレーニングの意識を少し変えるだけで骨盤底筋群を鍛えることができます。
その意識はと2つ
①お尻を上げたところで「お尻の穴」を締める
②腹式呼吸を意識して「腹横筋」と連動
〈方法〉
・上向きで寝転がり、リラックス
・お尻を持ち上げ膝、お尻、肩が一直線
・お尻を持ち上げたところで「お尻の穴」を締めてキープ
・5秒間で「お尻から背骨を1個ずつあげる」「息を吐く」
・3秒間「キープ」「お尻の穴を締める」
・5秒間で「背骨を上から1個ずつ下げる」「息を吸う」
・全身の力を抜きリラックス
このトレーニングは妊娠中でも産後すぐでも行えるトレーニングです。
骨盤底筋群は妊娠中、産後の女性にとって特に大事な筋肉なので意識して鍛えましょう。
多裂筋
多裂筋は背骨の際にあり背骨と背骨を連結して安定させる筋肉
インナーユニットとしては円柱の「後ろの壁」を構成
[多裂筋の役割]
①背骨の伸展・回旋・側屈動作の補助筋
②インナーユニットを形成し「腹圧の維持」
③背骨を支え安定させる
1番大事な役割は③の「背骨を支え安定させる」
特に腰痛との関わりが深い
①背骨を伸展(反らす)、回旋(捻る)、側屈(横に倒す)動きの補助をする。
アウターマッスルの脊柱起立筋や腹斜筋などのサポートをする筋肉。
②「横隔膜」「腹横筋」「骨盤底筋群」と協調し腹腔の内圧を維持することで体幹を安定させる。
特に「腹横筋」とは筋膜での繋がりが強く、コルセットのように体幹を安定。
③多裂筋と腰痛の関わりが深い。
多裂筋は背骨を安定させる役割があるが多裂筋(インナー)が筋力低下すると腰部の筋(アウター)に筋緊張が起こり疼痛が発生。
インナーが働かなければいけない所をアウターで代償し過剰収縮する。
腰部の筋肉が硬くなり腰痛が出ている人は多裂筋を機能させることが腰痛の予防・改善に大事になる。
多裂筋は腹横筋は“胸腰筋膜“で連結しているので同時に鍛えよう。
『インナーマッスルを鍛えて背骨を安定』
『アウターマッスルには柔軟な動きを』
次の動画では多裂筋を鍛えるためのトレーニングを解説。
バードドッグで多裂筋を強化
多裂筋は腹横筋と連動するので「呼吸を意識」して行おう。
バードドッグで多裂筋と腹横筋を鍛えることで腰痛の予防、改善になります。
〈方法〉
・四つん這いになる
・ゆっくり手と脚をクロスで伸ばす
・交互に10回を3セット
“息を吐きながら”手と脚を伸ばす
↓
“息を吸いながら”元に戻す
↓
“息を吐きながら”反対
これを繰り返し行いましょう。
産後の骨盤ケアでは骨盤底筋群が大事とよく言われていますが骨盤底筋群だけでは正しく機能しません。
インナーユニット全てが協調して機能することで正しく骨盤底筋群が働き、産後の骨盤を元に戻してくれます。
リラキシンで緩んでしまった骨盤引き締め、産前の身体に戻していくために正しく運動を行なっていきましょう。
関連記事